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連絡もせずに、この城で待っているだけだろう。 抗う事もしないと思うし、出来ないとも思う。 「……だから、手を……」 「え?」  裕子の呟きに龍二は聞き返すが、裕子は前を見据えたまま、反応を返さなかった。  泥沼にはまった片足を抜くために、人の手を借りる。 差し出された手は、龍二が自らの意思で伸ばしてくれた。 やはり、待っているだけの自分に、裕子は気づく。 知ったのに、当の本人が何もしないなんて、泣き寝入りの一歩手前だ。 泣き、寝入り? 「……泣き寝入りなんて、冗談じゃない」  裕子はやっとで自分を取り戻せた。 にっ、と笑って龍二の提案に答える。 裕子は泣いてなんかいない。 まだ、一度もだ。 これからも泣くつもりはない。 だがこのまま何もしなかったら同じ事だ。 自分にもまだ、プライドが残っている。 恥ずかしいなんて思いはもうない。 辱められたのだ。
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