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「……ぶはっ! 裕子さんってツンデレっすね、かーわいいー」
「は? ふざけんなっつーの」
「いいね、それ、地ですか? そっちのがいいっすよ」
また笑みを見せ、茶化すように言う龍二に、裕子はむっ、とした。
いい年こいた痛い女がむっ、とする。
少しだが、怒った。
自分は怒っている、怒っていいんだ、と裕子は声に出して笑った。
あはは、と何かが吹っ切れたように、止まらなかった。
龍二にも笑いが伝染し、笑っている。
「ふふっ、ほんと、何やってくれてんだか」
裕子は初めて、雅文を責めた。
そういえば喧嘩らしい喧嘩は雅文とした事がない。
本当の、初めてだった。
おもむろに裕子は缶ビールを掲げる。
龍二は裕子の行動を察し、同じく缶ビールを掲げた。
がこん、と鳴り当たる乾杯の音は、戦闘開始の合図だ。
裕子は龍二の差し伸べる手を掴んだのだ。
「女が廃るところだったわ」
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