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*ディアスの忌み子・1*
五日を掛けて、ヴィケルクアに到着したフィルティアは、早速、王との謁見の間に通された。
「其方が、アイルシェードの使いかな。いやはや、これまた随分とお若い」
謁見の間で玉座に座り、位置的に上から見下ろすヴィケルクアの王は、フィルティアを値踏みするように見てから、このように少々嫌味の込めた言葉を投げかけた。
大聖堂アイルシェードは、何者にも膝を着く事はない。
常に中立の立場にあり、その権限は何者にも脅かす事は出来ない。
たとえ、大国の王であっても。
それ故、王族や貴族たちは、アイルシェードの人間を快くは思っていない。
それはヴィケルクアの王も例外ではないようで、脂の乗った顔を、卑屈な笑いで歪ませている。
「私のような未熟者が、失礼致します。私は、アイルシェードより遣わされた、司祭、フィルティアと申します」
王の皮肉を、皮肉として捉えず、フィルティアは謙虚に頭を垂れた。
「……其方の事は、アイルシェードより聞いておる。なんでも、あの魔族を引き渡せと、そういう内容であったな」
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