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フィルティアの態度に毒を抜かれた王は、気まずさに咳払いをしつつ、本題へと話を移した。
「はい」
「しかし、一国を滅ぼした程の、凶悪な魔族。其方に抑制できるとは、到底思えないのだがな」
「それは……」
「解放して、もしもの事態が起こった場合、我がヴィケルクアに甚大な被害が及ばぬとも限らん。そうであろう?」
こんな小娘に、いったい何が出来る。
王の目は、完全にフィルティアを見下している。
「約束致します。私の命に代えても、この国には決して、被害は出させません」
決意の揺るがない、強い眼差しで見返すフィルティアに、王は面白くないとばかりに、小馬鹿にしたように鼻で小さく笑った。
「まぁ、よかろう。其方がそこまで言うのであれば、わしの心配も杞憂に終わろう」
どんなに頼りなく見えても、あのアイルシェードの使いであれば、まず心配はないだろうと、心の隅で思った王は、小さくほくそ笑んだ。
封じてあるとはいえ、一国を滅ぼした魔族。
いつまでも、厄介な魔族を自国に置いておきたくないという本心もあった。
多少、何事か起きたとしても、アイルシェードに責任を負わせればいい。
そうなれば、自国はアイルシェードに立場が強くなる。
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