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他の適任者が思いつかず、少しの間が空く。
すると、一人の大司教が、不意に思い付いたように一人の名を口にした。
「フィルティアは、どうだろう?」
「おいおい。いつから大司教は世襲制になったんだ?」
「しかし、フィルティアの持つ癒しと護りの魔法に敵う者は、このアイルシェードにはおらんではないか」
「いくらクレイモンド大司教の娘と言えど、所詮は血の繋がりがない子供。何処の出生かも分からん者を、大司教になど」
「たかが司祭の身分で、しかも女だろうに」
「嘆かわしい。それが聖職者の言葉かね?ここは聖なる場所であり、我々は聖なる役職の身。そのような差別的な発言、許されることではない」
フィルティアを卑下していた大司教たちは、ばつが悪そうに押し黙った。
「フィルティアは、民からの支持も厚い。あの美しさ。カリスマ性も十分にある」
「しかし、あまりにも若すぎる。レンブラントの方が適任だろう」
「フィルティアには、欲がない。野心もない。そういった人間が、大司教に就くべきだ」
「では、証明していただこう」
「証明?」
「彼女が、本当に相応しいのかどうか。その実力があるのかどうか。彼女自身に証明していただきたい」
「それが証明された時、我々も暖かく彼女を迎えよう。大司教として」
それから更に話し合いは続き、フィルティアに試練を与える事が決まったのである。
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