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彼女の父であるクレイモンド大司教は、不慮の事故により、突然この世を去った。
まだ幼く、身寄りのない彼女を、クレイモンド大司教は養女として迎え入れた。
大司教の娘となり、幼い彼女はベッタリと甘えたい時期にも関わらず、厳しい教え、躾、そして学問をこの大聖堂で学んだんだ。
誰にも愛されず、虐げられて育った幼い自分を受け入れてくれた父親には、感謝してもし尽くせない。
心に負っていた深い傷を、父親の存在が、そしてこのアイルシェードの教えが癒してくれたのだ。
クレイモンド大司教とフォルソン大司教は、修行の時代を共にした旧友同士だ。
その旧友の娘を、フォルソン大司教は、何かと気に掛けていた。
「あまり無理はしないでおくれ、フィルティア。私とて、彼がいない事が、とても寂しく辛い」
「フォルソン大司教様、ありがとうございます。私は大丈夫です」
健気に礼を言うフィルティアに、フォルソン大司教は、これ以上、掛けられる言葉が見つからず、優しく肩を叩いた。
「君に話があると言ったのは、この事ではなく、別の事だ」
「別の事…ですか?なんでしょう?」
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