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* * *
「う、んぅ……」
ちょっと変な声を出しつつも覚醒。全国の皆さんおはようございます、甘宮凛斗きゅんです。
おはようございますなんて言いつつも、目を開けた途端に眼球を突き刺すのは今日も今日とてしっかり働いている黄金の太陽の光だった。正直目が痛いです。
ゴシゴシとまだ眠気が残るぷりちーな我が眼を擦ると、涙を流していたことに気づく。
(そりゃそうか……)
夢の内容ははっきりと覚えている。どうしようもないその悲しさも悔しさも。
涙の跡を隠すように手で目を覆う。誰もいないだろうけど、なんとなく。
「てかここどこだよ……」
またあの悲しみを思い出さないように、意識を無理矢理外へと追いやる。
そこで今さらながら自分がとてつもなく気持ちいいベッドに寝かされていることに気づく。
ベッドの周りはカーテンで仕切られていて、室内のことはわからない。薬品みたいな匂いはするけど。
とりあえずベッドから降りようと体を起こ──
ズキンッ。
──しかけたところで脇腹の痛みで再びベッドへ倒れ込んだ。すごい痛い。
そしてこの痛みでようやく意識を失う前のことを思い出す。
(そういや先輩二人と戦ったんだっけ俺)
登校初日から先輩に全身ズタボロにされて脇腹に穴まで開けられるとかここはどこのヤンキー高校だよ。今時不良でもこんなリンチしねーよ。
「ま、勝ったけどね」
「凛斗きゅん超頑張ったもんねー」
「のわりには私達より傷だらけだけど」
カーテン越しにかけられる声。
二つの声の正体はカーテンを開けてその姿を現した。
「……二人ともピンピンしてますね」
新品の制服に着替えた蘭先輩と鈴先輩に驚いた様子は見せず、俺はまずそう声をかけた。
さっきまで戦ってたとは思えないくらいに元気そうな二人は一度微笑んでから俺の寝ているベッドに腰掛ける。
そして蘭先輩はブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを上から外し──
「──って何やってんの!?」
「凛斗きゅんが動けない今こそチャンスと思って夜這いならぬ昼這いを……」
「発情した猫かアンタは!」
俺のツッコミも意に介さず、蘭先輩は下着がもう見えるんじゃないかというくらいまではだけていた。もう少し……なんて思ってないぞ!?
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