甘……くはなかった邂逅

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「ホントにどうしよう……」  ポケットから魔法ではなく科学の利器、スマホを取り出す。高校入学祝いとして買ってもらった物だ。時刻を確認すると、9時45分。入学式は確か10時からだったから……。  残り、15分。  ここがどこかもわからず、絶賛迷子なのに残り15分。  新しい門出の日だとはりきっていたのに残り15分。  俺は悟った。 「神様って、いないんだな……」  まさにズーンという背景文字が見えてきそうな状況。  楽しみにしていた、かどうかは微妙な入学式。少し面倒というのが本音だったりするけども、別に本気で行きたくなかったわけじゃない。なのに……。 「どうしてこうなるんだぁぁぁあ!」  ニャーニャー!  俺の叫びに驚いて戯れていた猫ちゃん達が四方八方に散っていく。  ごめんね、猫ちゃん。けどこれが叫ばずにいられるかッ! 迷子になって入学式遅刻とかカッコ悪すぎるだろ!? 初日から笑い者だよ!  はぁ、と本日二度目のため息をつく。明日からクラス内でぼっちライフが始まると思うとそのため息も自然と長く。  ライフポイントがレッドゾーンに突入している中、体は癒しを求めていた。  「こういう時は、っと」  俺はリュックの紐を片方肩からずらし、その癒しを求めて中をゴソゴソと探る。アレはどこにいったのか。  すると指先にそれが当たる。 「お、あったあった」  そしてリュックから腕を引き抜こうとしたまさにその瞬間。猫ちゃん達が戯れていた方向から聴こえてくる重低音に気がついた。  それに続いてキュルル、という何かが擦れるような音も聞こえる。最後に断続的に響いてくる轟音。  何かと思い、視線を向けると向かってくるのは──黒い鉄の塊。 「えぇっ!?」  まさかの猛スピードで突進してくる黒い車。こんな狭い道じゃあり得ない速度で迫ってくる。なりふり構わずといった感じの運転だ。  時折、ガツンガツンと電柱やら看板やらにぶつかりながら迫ってくる鉄の塊、というか車。  よく見ればなかなかに大きいソレは黒光りする車体にいくつか傷が。 (いやいやよく見てる暇とかねぇし俺!)  このままじゃ轢かれるのは確実。  俺は決死の思いで空き地の方へとダイブ!  ドサッ……ブルォォン。  俺が倒れたその数瞬後に黒い車が通り過ぎる。何とその正体はリムジン。初見のリムジンが轢き殺してくるとか笑えない。
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