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「危な──」
ブルォォンブルォォンブルォォン!!
一息つこうとしたその時、さらに三台の黒い車が通り過ぎる。
リムジンほど大きくはないその三台はリムジンとの距離を人一人分くらい空けて走行していた。
車が通り過ぎた後に吹きつける風。前髪が煽られ、見開いた目はドライアイに。
次の瞬間、冷や汗が滝のように流れる。
もし避けてなかったらさらに三台に轢かれてスプラッタな光景が出来上がっちゃってたようだ……。
むくっ、と俺は上半身を起こす。変な体勢で倒れたから所々痛むけど、まぁ死ななかったんだから良しとしよう。
「ぷはぁーーー」
そしてようやく俺は一息ついた。自分の命がちゃんと存在していることを実感して、一安心。
胸に手を当て、心臓がちゃんと動いていることも確認。
俺はほっと胸を撫で下ろす。
(…………ん?)
と、ここで安心はしたけど、今度は疑心が生まれる。
「にしても何なんだよ、さっきの」
少し冷静になった頭でさっきの奇妙な光景を思い出す。
大通りなら間違いなくお巡りさんに捕まる速度で走る四台の車。廃ビルは建っているし、人気のない道ではあるけどあんな速度で走るなんて普通じゃない。
それに金持ちが乗るようなリムジンなのに傷がたくさんあった。
さらには後ろの乗用車三台は統率されたみたいに互いの邪魔をしないように走ってた。あんなデタラメな速度なのに……。
……何と言うか、アレは……。
「リムジンを、追ってるのか……?」
ふと口から出た疑問。
けど何でだ? 都会ってこういうのが普通なの? カーチェイスブーム到来?
そんなのが日常茶飯事とかどんだけエキサイティングなんだ、ここは。
制服についた汚れを払って立ち上がる。リュックも無事だから、まぁ良しとしよう。
でも寿命は縮んだ。確実に。
そして時計を見るまでもなく、もう入学式には間に合わない。
「探すだけ探すかな」
もう遅刻覚悟でのんびり探すことに決定。さっきのが気にならないわけじゃないが、学校は探さないと。
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