甘……くはなかった邂逅

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 空き地から道路に出て、車が走ってきた方と走っていった方を交互に見る。  どちらも普通の道。変わったところがないから、どちらに行くか迷う。 (車が来たのは俺が歩いてきた方か。戻ってもまた迷子になるだけ、かな)  左か右か。  車が来たのは左側。俺が来たのも左側。  ならとりあえずは右に進むことに決定だ。  先がどうなってるかはわからないが、淡い希望を胸にリュックを背負い直す。  キッ、と前を向いて再び歩き出した。高校生活のスタートラインを目指して──。 (FIN……って映画だったらなるのかね)  やることが無さすぎて自作映画のワンシーン、しかもラストを飾ってみたりする。だが寂れた背景、いやセットのためにあまり輝かない。  俺が進む一本道の脇は一軒家やアパート、珍しい木造住宅などが立ち並ぶ。そんな中で撮影というのも夢がない。  はぁ、とため息をつきながらとぼとぼ歩んでいく。  どれだけ進んでも、春うららな雰囲気など一つもない。春なのにどよーん、としすぎていてテンションもだだ下がり。  唯一あるのは道の脇に咲くタンポポくらい。黄色い花弁をたくさんつけて、こんな暗い道に豆電球くらいのわずかな光を当ててくれている。  いつもなら全く風情なんて感じないタンポポを見つけながら歩いていると、変なものが視界に入る。  しゃがみ込んで、じっとそれを観察。  赤黒い点がいくつかまとまって道路に付着していた。  見ていてあまりいい気のしない色。だが毒々しいその色には見覚えがあった。 「……血?」  ふと零れたその言葉。さすがに一人で「……ケチャップ?」なんてボケはかまさない。  下を向いていなければ気づかないような少量だが、よく見ればそれは血。  道路を見通すと、この赤黒い点々がいくつも続いていた。まるで道標のように。  しかも血の跡の他に、道路には焦げたような跡もある。  どう考えてもさっきの怪しさムンムンの車達だろう。 (俺は無事だし見逃してやろうと思ったのにな……)  さすがに人の命が関わっていることを匂わせるこの血痕は無視するには重たすぎるだろう。  警察に連絡しようとポケットからスマホを取り出す。 「嘘だろ?」  けど電源ボタンを押してもその画面は真っ暗なまま。
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