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さっきよりも遠くまで見える。道路の小さな血の跡までしっかりと。
限界まで見通すと、途中の曲がり角で血の跡が途切れている。そこを曲がったらしく、しかも焦げ跡もしっかりカーブを描いて存在していた。
「こりゃ本格的に警察沙汰かなぁ……」
俺みたいなのに出来ることなんてそんなにないとは思う。
けれどもこれで見過ごしたりしたら寝覚めが悪い。ついでに言えば偽善かな。
走り出す前につま先でコンコン、と道路を軽く叩くとその表面にヒビが入った。
「……さて、行きますかー」
脚にグッ、と力を込めて──
──ダッ!
コンクリートの道路を踏み抜いてスタートを切った。
風を置き去りにして駆ける。
視界が目まぐるしく変化し、ブレた写真を連続で見せられているような中でもきちんと血痕を確認するのは忘れない。
赤黒い点を通過する度にその周りもチェック。手がかりになりそうな物を探す。
(このスピードで走っててもまだ先があるのか)
思っていたよりも遠くまで血の跡がある。
眉をひそめながら辺りを注意深く観察。それでもやっぱり血の跡と焦げ跡しかない。
(おっ、もう曲がり角)
ふと前を見ると血の跡が途切れた曲がり角が。一応この道路の先まで見通すも、やっぱり血痕はない。
左足で切り返して右に曲がる。
その際、チラ、と下を見ると焦げ跡と同じように少しカーブを描いているようにも見える血痕が。よく見るといくつかの点が右に逸れるようにして付いている。
出血量はそこそこ。焦げ跡の偏りやらから判断して怪我をしているのはリムジンに乗っていた側だろう。
それを確認しながら止まることなく曲がった先の道を走り続ける。
そのまま走り続けていると、少し先に古びたビルが見えてきた。ここら一体では一番高い建物。ゆえによく目立っている。
(……ん? 血の跡が……)
血痕を先追いしていくと、次に途切れている場所はまさにそのビルの真下だった。しかもそこには──
「黒い車……」
──俺を轢きかけたリムジン達も止まっていた。
ニッ、と口角が上がる。
「──見ーつけた!!」
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