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「……金色?」
何も見えないと思ったけど、たまたま開いていた窓からチラッ、と金色の何かが見えた。ホントにチラッと。
金色から連想される物。お金、金貨、お宝……。
実はさっきの人達はトレジャーハンターでそのお宝を狙ってるなんてことは……。
「……ねぇよ」
バカみたいな考えを即座に捨てる。酸欠で脳が正常に機能してないらしい。
頭に不安が残る中、周りを見渡すが誰もいない
腰に手を当てて、俺はもう一度ビルの窓を見上げた。
(金色、ねぇ……)
不思議とそれが引っかかる。理屈じゃなくて、俺の中にある何かが惹きつけられるような。
俺はまたその窓を見上げた。
聞こえてきた銃声からして銃はまずショットガンやマシンガンの類ではない。
次にビルの隣を確認。人が住んでるかわかんないけど、木造の古びた家。
その家と窓を交互に見る。家。窓。家。窓。
家は二階建て。その耐久性は信用出来るか微妙なところ。
「……行ってみるかー」
俺はまたリュックからアレを取り出し、一欠片割って口に含む。
力が漲る。全身に力が巡るのを確認すると、脚にグッ、と力を込めた。
「耐えてくれよ、おんぼろ屋根」
ダッ!
跳躍。視界がガラリと変わり、どよーんとした空が視界の半分を占める。
「ちょっとお邪魔しまーす」
小声で断りを入れておきながらおんぼろ屋根の上に軽く着地。そこからさらに屋根を足場にして跳躍。
「お邪魔しましたー」
滞在時間は一秒にも満たなかった。てか跳んだ時にベキッ、て足元から聞こえたけど気にしない。うん。気にしない。
さらに跳んだことで周りのほとんどの建物よりも高くなった。俺より高いのはこの廃ビルくらい。
あわよくば学校見えたりして、なんてほのかな願いを抱く。
そして辺りを見回しながら、窓に手をかけ、足をその縁に載せた。
「よっこらせ、と」
おんぼろ屋根という尊い犠牲を払いながらもたどり着いた謎のビル三階。果たしてその正体は……。
「────ぇ?」
「……え?」
……小動物みたいな可愛い声をもらしたのは決して俺じゃない。断じて違う。
その声を発した人物は俺の目と鼻の先にいる。この泣き腫らした目で俺を見つめる金髪赤眼の美少女だ。
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