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「お前は自分で思ってるよりもずっとずっと人の中にいんだよ。
言ってる意味わかる?」
「…………うん」
「つまり、だ」
勢いづけて俺の鼻先を弾く。
「きっと彼女もお前のためにしんどい思いしてんじゃねぇのかってことなんだよ。
お前との子供が欲しいから、前に進みたいから。
まぁ俺は彼女じゃねぇし、確実じゃねぇけどさ」
静華さんが俺と。
指輪を外したのも中里に傷付けられたからじゃなくて。
今、俺のところにいるのも逃げてるわけじゃなくて。
「……そんなこと、考えもしなかった」
「考えろ、バーカ」
あんまりに予想外で頭が回らない俺に陸が目尻のシワを寄せてクシャっと笑った。
そんな可能性、俺の中にはなかった。
俺を、なんて。
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