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 20XX年、長年、懸念され続けてきた事がついに現実となった。それは、星そのものを未曾有の危機へと陥れた。資源の枯渇ではない。それ以上に恐ろしい事、温暖化による異常気象がもたらした、世界的な乾燥と急速な砂漠化。  乾燥と砂漠化は僅かに残っていた森林でさえも浸食していった。植物は枯れ、それをエサにしていた多種の動物達も次々と死んだ。気温は留まることを知らず上昇を続け、北極、南極の氷を溶かし海面を上昇させた。しかし、上昇した海水ですら砂漠にか勝てなかった。海水は干上がり海底が露出する範囲が日を追うごとに広がった。  そして、一滴の雫すら空か降ってくることはなくなった。  地上に残った水を巡って人々は争いを起こすようになった。水を求めるというのは、生命の根源であり必要不可欠なことだった。誰もが水を求め争い、一滴の水さえ無駄にはしなかった。ついには、殺した相手の体液でさえ濾過し飲み水した。端から見れば異常な行動であるが、生き延びようとする人々にとって、道徳心、罪悪感、生命倫理など存在しなかった。今を生きるという、そのものが倫理なのだ。  そんな人々の争いを嘲笑うかのように、砂漠化は人々の居所さえ奪った。コンクリートで造られた建物は全て砂、風に浸食され朽ち果て、繁栄を誇った大都市ですら何もない砂漠の大地に変えた。残された僅かな水場も枯れ、人々は移動を余儀なくされた。かつて、地上は植物の楽園だった。そこを虫が、恐竜が、ほ乳類が、人類が侵食していった。そして、今、自然界が再び、主導権を取り戻そうとしているかのようだ。人類はもはや、地上の王ではない。追われる立場の生物なのだ。砂漠という新たな世界の頂点に。  ある時、人々はまだ乾燥しきっていない水がある場所へと辿り着いた。そこに残る水は他の土地に比べると量も豊富にあり、まるで一つの池のようだった。生き残り、そこに辿り着いた人々は、そこを地上に残された最後のオアシスにすることを決めた。池の周りに暑さを凌ぐ為の民家を建てた。この頃には、水を覆おうような布を作る技術は残されていない。だから、少しでも水を長持ちさせる為、水は均等に人々に行き渡るよう常に管理されることになった。どんなに喉が渇いても、配布された水以外、池の水には手をつけない。それが、掟となった。そして、ヒマさえあれば、飽きることなく雨乞いをするのだった。雨が戻るのを信じて。
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