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 彼は一思いに、その最期の水を飲んだ。喉を通り抜け、空っぽになっていた胃へと到達する。久々の水に胃は驚いていたが、すんなりと受け入れられ身体に最期の水が染み渡った。そして、すぐに彼は乾きに襲われた。  彼の唇は乾ききっていた。口に含んだ僅かな水でさえ、もう蒸発しているかのようのだ。彼は恨めしそうに快晴の空を仰いだ。それから、もう嗄れきって言葉にならなかったが、精一杯の思いで叫んだ。 「な、何故、こうなってしまった・・・。出来ることならば、他の星でも同じことが起こらぬよう願いたい!せめて、この墓石が我らの墓標であると同時に愚行の証として、この宇宙のどこかにいる生物に伝わるよう願いたい!」  それは、最期の言葉であった。  彼は力尽きて倒れた。かつて、池であった地表には、まだ水が染みていたらしく、冷たい水の感触が彼の頬を伝わった。これが、彼が人生で初めて感じた水の冷たさであった。心地よさであった。まるで、誰かに抱きしめられているような落ち着きさえ感じる。 (これが・・・水なのか・・・)  彼はその心地よさに眠るようにして、その一生を終えるのであった。  彼の死を安らかにしてくれた水とは呼べる僅か、本当に僅かな水分も一時間もしない内に蒸発した。  砂漠は人類にとっての最後のオアシスですら、砂に飲み込んでしまった。  この星は完全な死の星と成り果てたのだ。
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