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――――…
美佳と会わない日でも、和馬の帰宅時間は変わらなかった。
仕事が早く終わっても、本屋やパチンコに立ち寄り、結局、毎日同じ時間に帰宅する。
最近、円香の顔を見ると何故かイライラする自分がいることに気付いていた。
面白味のない会話にケチをつけたが、それは今に始まったことではない。
イライラの原因が何かは分からなかった。
彼女が日に日にオバサンに近付いて行く様子に嫌悪感を感じているのかもしれない。
とにかく一挙一動、イライラさせられた。
和馬がリビングに入ると、円香はいつもの様にキッチンで食事の支度をしていた。
「お帰りなさい」
円香はそう言って笑顔を見せた。
新婚の頃は、食事の支度をする彼女を背後から抱き締め、じゃれ合ったものだった。
しかし、今はそんなことする気にもならない。
妻は女ではなく『家族』になってしまったように感じていた。
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