【旋 律】前編 第四章

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  ……そういえば、楓君のお母さんはコンタクトショップの隣で働いているって言っていたよね? と思い立ち、コンタクトショップの脇に奥へと続く通路があり、 突き当たりに開放されたガラス張りのオフィスの扉に『ファイナンシャルプランナー・只今、無料家計相談会実施中』という張り紙の文字が目に入った。 土曜の今日も営業していそうな雰囲気だったので、円香は慌てて近くのケーキショップでシュークリームを購入し、伺うようにオフィスを覗き込んだ。 すると、四十代前半と思われるショートヘアの活気のある洗練された女性が、 「こんにちは、家計無料相談していきませんか?」 と笑顔で声をかけていた。 胸の『広瀬恵美』というネームプレートを見て、鼓動が強くなることを感じながらも、 「あ、あの、広瀬さん……ですか?」 と伺うように尋ねると、彼女はキョトンと目を開いた。 「はい、広瀬です」  
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