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「あ、あの……楓君のお母様ですか?」
やだ、私アヤシイ人みたい。
ちゃんと挨拶したいと思ってたのに。
自分のふがいなさにバツ悪さを感じていると、
彼女は少し考えるような仕草を見せた後、「ああ!」と声を上げた。
「もしかして、亜美ちゃんのお母さん?」
明るくそう言った彼女に、円香は驚きながらも、
「は、はい。
あの、クッキーありがとうございました。
その上、楓君には、お世話になって、一度お礼をと思ってまして。
良かったら、これ食べてください」
恥ずかしさに頬が熱くなることを感じながら、シュークリームの箱を差し出すと、彼女はアハハと笑った。
「まぁ、わざわざすみません。
あっ、どうぞ座ってください」
そう言って彼女・広瀬恵美(エミ)は、嬉しそうに円香に席を勧めた。
「でっ、その噂のかわいいチビ姫様は、どこなのかしら」
と亜美の姿を探すように首を伸ばした恵美に、円香は思わず笑った。
「亜美は今、主人と映画を観に行ってて」
「あら、残念。
楓がとてもカワイイ子だって言うから会いたかったわ。
お母さんがこんなにかわいいんだもの、きっと亜美ちゃんもカワイイわよね」
そう言って明るく告げた恵美の快活な雰囲気に触れ、円香は思わず感心した。
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