【旋 律】前編 第四章

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  「あ、あの……楓君のお母様ですか?」 やだ、私アヤシイ人みたい。 ちゃんと挨拶したいと思ってたのに。 自分のふがいなさにバツ悪さを感じていると、 彼女は少し考えるような仕草を見せた後、「ああ!」と声を上げた。 「もしかして、亜美ちゃんのお母さん?」 明るくそう言った彼女に、円香は驚きながらも、 「は、はい。 あの、クッキーありがとうございました。 その上、楓君には、お世話になって、一度お礼をと思ってまして。 良かったら、これ食べてください」 恥ずかしさに頬が熱くなることを感じながら、シュークリームの箱を差し出すと、彼女はアハハと笑った。 「まぁ、わざわざすみません。 あっ、どうぞ座ってください」 そう言って彼女・広瀬恵美(エミ)は、嬉しそうに円香に席を勧めた。 「でっ、その噂のかわいいチビ姫様は、どこなのかしら」 と亜美の姿を探すように首を伸ばした恵美に、円香は思わず笑った。 「亜美は今、主人と映画を観に行ってて」 「あら、残念。 楓がとてもカワイイ子だって言うから会いたかったわ。 お母さんがこんなにかわいいんだもの、きっと亜美ちゃんもカワイイわよね」 そう言って明るく告げた恵美の快活な雰囲気に触れ、円香は思わず感心した。  
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