【旋 律】前編 第四章

21/24
867人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
  「でもね、色んな話をしてくれる中で、亜美ちゃんとあなたの話は本当に楽しそうにしてくれたのよ。 亜美ちゃんがとても懐いてくれてかわいかったって。 そして自分がピアノで好きな曲を弾けたって、本当に嬉しそうに……。 あの子、ピアノ習いたかったのに言い出せなかったのかもしれないわね」 恵美はそう言って自嘲的な笑顔を見せ、円香を見詰めた。 「楓は自慢の息子よ。 あんなに優しくて賢くて、その上、イイ男でしょう?」 「そうですね」 円香が笑顔で頷くと、恵美は嬉しそうに目を細めた。 「どこに出しても恥ずかしくない自慢の息子。 私は幸せよ。 ……でもたまに楓がちゃんと幸せかどうか心配になる時があるわ。 我慢ばかりしているような気がして……言いたいことも言えていない気がして……」 恵美はそう言って、目を伏せた。 「楓君、お母さんのこと誉めてましたよ。 自分の事を心配してくれる、素敵な人だって。 明るくてイキイキしてるお母さんだって言ってましたよ」 穏やかな口調でそう言った円香に、 「そう……そういう風に言ってくれてたんだ、嬉しいな」 と恵美は優しい微笑を浮かべた。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!