【旋 律】前編 第四章

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  和馬さんといるときの私は、どこか背伸びをしている。 円香先輩とは違う、知的で大人な女でありたくて、どこか無理しているのかもしれない。 でも、裕也の前で、遠慮なく馬鹿な自分を出せる。 美佳は裕也の腕にギュッとしがみついた。 そんな美佳の姿に裕也は、「相変わらず甘えん坊だな」と楽しそうに笑った。 「何よ、年下のくせに」 「なんだよ、チビのくせに」 「デカい図体のあなたと、体格で張り合いたくないわよ」 二人は何を話しても楽しい様子で、カフェに入った。 「名古屋支店は忙しい?」 コーヒーを口に運びながらそう尋ねた美佳に、裕也は「ああ」と頷いた。 「相変わらず激務。多分、本社より忙しいんじゃないかな」 裕也はそう言って苦笑を浮かべた。  
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