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楓が隣に座るなり、円香は気恥ずかしさを隠すように、口を開いた。
「あっ…、か、楓君、部活は?」
「行き詰まったんで、解散しました。
帰るついでに、まだ公園にいるかなと思って」
「そう、行き詰まっちゃったんだ。
さすが弁論部。大変なのね」
「弁論だから発表する時に自信を持ってハッキリ発表しなきゃならないのに、うちの部員は揃いも揃ってあがり症ばかりで発表の場になると、いつも舞い上がって失敗したり、声が聞こえないほど小声でボソボソ話すんです。
結局それが原因で、いつも落選なんですよ。
それで今日は、発表の練習をしていたんですけど、練習の時点で、既に駄目になってて……。
もう、論文の内容以前の問題なんですよ」
と楓は、やれやれと肩をすぼめた。
「もしかして、楓君が部長さんなの?」
「いえ、違いますよ、まだ二年生だし」
「そうなんだ、部長みたいな口ぶりだったから」
「実は部長が一番のあがり症なんですよ。
だから必然的にしっかりしてしまって。
部が発足されてから、一度も一勝したことがないんですよ。一勝くらいはしたいなぁ」
楓はそう言ってふぅと息をついた。
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