【旋 律】前編 第五章

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  「えっ?まだ、一度も一勝したことないの?」 円香が露骨に驚くと、楓はブスッとしながら「はい」と頷いた。 そんな楓の姿に円香は思わず笑うと、 「いや、今度は僕も発表するし、一勝は必ずしてみせますよ」 と楓はムキになったように拳を握った。 「ご、ごめんなさい、勝てないのを笑ったんじゃなくて、いつも、大人みたいに悟ってる楓君が子供みたいな顔を見せてくれたから、なんだか嬉しくて、つい」 「そんなに大人びてますか?」 「大人びてるとは違うかな? ……すごく素直なイイ子って感じはするんだけど、悟ってるって言うのか……」 「悟ってる……か……」 楓はそう漏らし、自嘲気味な笑みを浮かべた。  
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