【旋 律】前編 第五章

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  楓にまっすぐに見下ろされ円香の鼓動は強くなった。 ――こんなに背が高いんだ。 華奢に感じたけど、肩もガッチリしてる。 ――やっぱり、カッコイイ。 「楓君って……」 カッコイイね、そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。 「ピ、ピアノ習いたかったの?」 咄嗟に思いついた質問をぶつけると、楓は小さく笑って、またベンチに腰を下ろした。 「ピアノに限らず楽器に憧れはありましたけど、習おうとまで思いませんでしたね。 塾にも行かせてもらってたし」 『行かせてもらってる』 子供らしくない言葉に、円香は苦笑した。  
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