【旋 律】前編 第五章

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  やっぱり、習いたいのに遠慮してきたのかな? 「どうしてですか?」 「えっ?うん、なんとなく。 この前、とても楽しそうだったから」 「楽しかったです。 学校のピアノを使って『これ、弾けるんだぞ』って自慢したら、自慢できるほどの腕じゃないだろって友達に笑われました」 楽しそうにそう言った楓に、円香も思わず笑った。 「インチキ先生の私でよければ、いつでも教えてあげるわよ」 「そんな……バイトもしてないんで、月謝払えないですよ」 「月謝なんているわけないじゃない、インチキ先生なのに。 まぁ、勿論、楓君に興味があればの話なんだけど。 部活に塾に大変なのに、その上、ピアノまで手が回らないわよね」 クスクス笑ってそう告げると、 「……円香さんは、何か習いたいこととかはあるんですか?」 唐突な質問に円香は少し考え、 「今、色んなことにチャレンジしたいと思ってるんだけど、なかなか……。 英会話は何度もチャレンジしようとして挫折ばかり」 そう言って苦笑すると、 「じゃあ、こうしましょうか」 と楓は笑顔で円香を見た。  
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