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楓は帰り支度をし、円香を見てペコリと頭を下げた。
「それではごちそうさまでした、アップルパイ、美味しかったです」
「楓ちゃん、バイバイ」
「塾がんばってね」
「ありがとうございます。
バイバイ、亜美ちゃん」
そう言って楓は玄関を出て行き、円香は胸の内側に熱いものが残ることを感じながら、キッチンに向かい夕食の支度を始めた。
楓君に英語を教えてもらうのは嬉しかったけど、正直、自分の頭の悪さを知られることが怖かった。
だけど、彼は決して呆れたりすることなく優しく丁寧に教えてくれた。
優しいな、楓君……。
彼はどんな大人になるんだろう。
まだ、17歳の少年。
きっと、これからも背は伸びて、体付きも更にしっかりしてくるだろう。
その優しさも思いやりも、より深くなり、
端正な顔立ちと目を引くルックスは大人の魅力を加えてくるだろう。
そうなった時、
きっと彼は誰よりも素敵になる。
円香はハーッと熱い息をついた。
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