【旋 律】前編 第六章

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  自分にとって、恵美は絶対的存在だった。 血のつながりがないのに、こんなにも優しくしてくれている。 働きながら、自分を名門私立高校に行かせてくれている。 いつも何かの形で返していかなければならないと思っていた。 そして期待に添えるような自分でなければならないと感じていた。 成績も、生活態度も、全てにおいて。 そんな楓は、常に自分の用事よりも、恵美の用事を優先にするようにし、 日常生活においてなるべく恵美とコミュニケーションを取るよう心掛け、一日の出来事を報告するようにしていた。 学校での友人関係、今の学力状態、部活での様子、塾の講師のこと――――。
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