【旋 律】前編 第七章

23/26
1473人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
  「遅ればせながら、お誕生日おめでとう。 そして、いつもありがとう、楓君」 円香はそう言うと、続いて亜美も「ありがとう、楓ちゃん」と元気な声を上げた。 「……ありがとうございます」 そう言った楓の目が赤くなっているのを見て、円香の鼓動がトクンと波打った。 「ほら、楓くん、塾遅れるわよ」 円香はそんな胸の内を、誤魔化すように楓の背中を軽く叩いた。 「あっ、はい、行ってきます。 本当にありがとうございました」 そう言って屈託なく微笑んだ楓に、円香の胸は熱くなった。 「じゃあ、また来週ね」 「はい、また来週ですね。 お弁当、ありがとうございました」 そう言って楓はペコリと会釈し、玄関を後にした。  
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!