【旋 律】前編 第八章

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  「円香さんは本当に料理上手ですよね」 ニッコリ笑ってそう言った楓に、 「子供がそんなお世辞言わないの」 と円香は照れ臭さに頬を赤らめつつ、キッシュを皿に取り分けた。 「でも、料理上手なんて言っても、 肝心の旦那は、私のお弁当を捨ててるくらいだしね」 と低い声で告げて息をついた。 その言葉に楓は「えっ?」と目を開いた。 円香は瞬時に自分の言ったことを後悔した。 私ったら……楓君に夫婦の愚痴を言うなんて……。 「旦那さん、お弁当捨ててるんですか?」 真剣な表情で詰め寄る楓に、円香は困ったように目を伏せながら、 「……実は、こんなメールが来て……」 と携帯電話を差し出して、美佳からのメールを見せた。  
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