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楓は携帯電話を受け取り、メールと画像を見た後、小さく息をついた。
「……円香さん、僕も友達と大会に行く時、母がお弁当作ってくれるんです。
でも、皆でラーメンを食べに行こうという話になったら、作ってもらった弁当を食べずに、皆と一緒にラーメンを食べて、家に帰る前に弁当を食べることってあるんですよ」
そう話し出した楓に、円香は言葉の意図が分からず目を細めた。
「僕は育ち盛りなんでラーメンもお弁当も食べることが出来ますけど、食べられない場合は手つかずの状態で持って帰ることになると思うんです。
でもせっかく、作ったお弁当が、手をつけていない状態だったら、悲しい気持ちになると思うんですよね。
母は自分の息子の為に作ったお弁当を自分の手で処分することになると思うんです。
それを考えたら、家に帰る前に捨てて帰るのも、思いやりだとも思います」
そう告げた楓に、円香は言葉を失った。
「旦那さんは、人との付き合いで外に食べに行って、円香さんのことを思って捨てたのかもしれませんよ?
毎度捨てているとは考えにくいです」
そう、落ち着いた口調で諭すように言った楓に円香は思わず俯いた。
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