【旋 律】前編 第九章

13/31
前へ
/31ページ
次へ
  「あ……悪かったね、俺も焦って……」 「ううん、和馬さん。 私って焦る存在なのよね?邪魔な存在なのよね?」 美佳は目に涙を浮かべながら、和馬を見上げた。 「そんなことないよ」 「ううん、結局、ただの遊びの女なのよ。 だから、鬱陶しいことをされたと感じたら、そんな剣幕で怒るのよ」 美佳はそう言って目を伏せ、小さく息をついた。 「何を言うんだよ」 「ううん、今ので分かったの。 私は和馬さんを焦らせるだけの鬱陶しい存在なんだって」 美佳はそう言って和馬に背を向けた。 「もう、別れるわ。もう会わない」 そう告げた美佳に、和馬は大きく目を見開いた。 「バカなこと言うなよ」 「あなたは円香先輩こそが大切なのよね。 だから、キスマークひとつでそんなに焦るのよね。 もう、会わない方がいいわよね」 美佳はそう言って振り返り、涙で潤んだ切なげな瞳で和馬を見た。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1362人が本棚に入れています
本棚に追加