【旋 律】前編 第十章

10/31
1388人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「楓君と私って、いくつ違うのかな?」 「14ですね」 即答する楓に、円香は思わず笑った。 「14かぁ……。 私が中学二年生のときに楓君が生まれたんだ。 そう考えると凄いよね」 「そうですね」 「でも、楓君の方がずっと知識があって、寛容で視野が広くて大人よね。 私は31年も何をやって来たのかな?」 円香は空を仰ぎ、やりきれなさに唇を噛んだ。 「僕こそ何もやってきてませんよ。 頭でっかちが故に動きの取れない……赤ちゃんと一緒です」 皮肉めいた笑いを浮かべそう告げた楓に、円香は少し驚きながらも、笑みを見せた。 「――そうやって、冷静に自己分析しちゃうところも楓君らしいわね」 そう言ってクスクス笑った後、缶コーヒーをまた口にした。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!