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「ごめんなさい……。
旦那ね……帰って来たらシャツが裏表逆だったの。
いつも私が用意するシャツを裏表逆に着ているなんて、一度脱がないとありえないのにね。
彼、二人の結婚記念日に……他の誰かと一緒に過ごしたのかな?」
何言ってるんだろう、こんな高校生の男の子の前で……。
そう思いながらも、とめどなく涙が流れた。
楓は心配そうに円香を見た後、制服のジャケットを脱ぎ、ゆっくり背中を向けた。
「楓くん?」
突然、自分に背を向けた彼に円香は戸惑い顔を上げた。
「……胸を貸すわけにはいかない気がするので……僕の背中で良ければ……」
その言葉に円香はキョトンとした後、「楓君ったら」とクスクス笑った。
そんな楓の優しさに触れ、今まで押しこめてきたものが溢れ出してくるように、涙が溢れ出た。
……うっ!と漏らし、楓の背中にギュッとしがみつき、声を殺して涙を流した。
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