【旋 律】前編 第十章

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  頬から伝わる楓の体温が心地よく、 重苦しい気持ちが緩和されるような気がした。 少年だとばかり思っていた彼の背中や肩は、とても大きくガッチリしていた。 ―――愛しい、と思った。 この背中に頬を寄せ、いつまでもこうしていたいと感じた。 そして彼は背中にもたれ、声を殺して泣く自分を黙って受け止めてくれていた。 ―――楓くん。 そんな楓の背中を眺め、これ以上はいけないと円香はそっと離れた。  
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