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「――ごめんなさい、私ったら……」
恥ずかしげに俯いてそう告げると、楓は振り返り首を横に振った。
「あっ、ワイシャツ、涙で濡らしちゃったね、本当にごめんなさい」
涙に濡れたシャツを見て、円香は慌ててポケットからハンカチを取り出した。
「いえ、いいんです、そんなのは。ジャケットを着ますし」
楓はそう言ってジャケットを羽織り、ほらね、と微笑んだ。
「本当にありがとう。
おかげで、少しスッキリできた」
そう言って笑みを見せた円香に、楓はキュッと拳を握り締めた。
「円香さん、あの……惑わせるようなメールには気をつけて下さいね」
「えっ?」
楓の言葉の意図が分からず、円香は眉を寄せ、小首を傾げた。
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