【旋 律】前編 第十章

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  「――ごめんなさい、私ったら……」 恥ずかしげに俯いてそう告げると、楓は振り返り首を横に振った。 「あっ、ワイシャツ、涙で濡らしちゃったね、本当にごめんなさい」 涙に濡れたシャツを見て、円香は慌ててポケットからハンカチを取り出した。 「いえ、いいんです、そんなのは。ジャケットを着ますし」 楓はそう言ってジャケットを羽織り、ほらね、と微笑んだ。 「本当にありがとう。 おかげで、少しスッキリできた」 そう言って笑みを見せた円香に、楓はキュッと拳を握り締めた。 「円香さん、あの……惑わせるようなメールには気をつけて下さいね」 「えっ?」 楓の言葉の意図が分からず、円香は眉を寄せ、小首を傾げた。  
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