【旋 律】前編 第十章

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  『……胸を貸すわけにはいかない気がするので……僕の背中で良ければ……』 そう告げた楓の言葉を思い出し、円香は切なく目を細めた。 ――その胸に……ためらうことなく思い切り飛び込める女の子が羨ましい。 次の瞬間、円香は自分の思ったことに顔をしかめた。 ……何を考えているんだろう。 ―――17歳は 少年の純粋さと大人の魅力が見え隠れする、最も美しく輝かしい時なのかもしれない。 それが眩しくて、目眩がしているだけ。 この感情は、愛でも恋でもない。 ―――この子に恋をしているわけじゃない。 円香は自分に言い聞かせるように何度も頭の中でそう反芻し、そっと唇を噛んだ。  
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