【旋 律】前編 第十章

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  家の前まで来て、楓は心配そうに円香を見下ろした。 「何かあったら、メールくださいね。 どんなに遅くても構いませんから」 その言葉に、円香はクスクス笑ったあと、 「もう……どうしてそんなに優しいの?」 と涙目で楓を見上げた。 予想もしなかった質問に、楓は戸惑いの表情を浮かべ、弱ったように額を押さえた。 「……どうして……どうしてなのかな?」 「えっ?」 円香がキョトンとすると、楓は少し笑って、 「分かりました。 それは円香さんが、優しいからですよ」 と柔らかく微笑んで、そう答えた。 二人は顔を見合わせ、それじゃあ、と手を振り別れた。 円香は家に入り、ふぅと息をついた。 ありがとう……。 祈るように、そう思った。  
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