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家の前まで来て、楓は心配そうに円香を見下ろした。
「何かあったら、メールくださいね。
どんなに遅くても構いませんから」
その言葉に、円香はクスクス笑ったあと、
「もう……どうしてそんなに優しいの?」
と涙目で楓を見上げた。
予想もしなかった質問に、楓は戸惑いの表情を浮かべ、弱ったように額を押さえた。
「……どうして……どうしてなのかな?」
「えっ?」
円香がキョトンとすると、楓は少し笑って、
「分かりました。
それは円香さんが、優しいからですよ」
と柔らかく微笑んで、そう答えた。
二人は顔を見合わせ、それじゃあ、と手を振り別れた。
円香は家に入り、ふぅと息をついた。
ありがとう……。
祈るように、そう思った。
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