【旋 律】前編 第十章

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  「美佳……どうして、そんな物を?」 「ちょっと拝借したのよ。 でも、お返しするわ。郵送で円香先輩の所に。ホテルの名を語ってね」 美佳はそう言ってニッと笑みを浮かべた。 「……美佳」 「由香もいつまでもいい子してないで、奥さんに攻撃すべきよ」 美佳はグイッとビールを飲み、口を拭った。 奥さんに攻撃……。 由香は目を伏せ、 「そんなの……百万回思ったわよ」 と低い声で呟いた。 「そうでしょう?」 「でもね、間違ってるのは、私たちなのよ。 それが分かってるから、奪えないのよ」 由香は涙目で真っ直ぐに美佳を見据えた。  
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