【旋 律】前編 第十章

7/31
前へ
/31ページ
次へ
  「さっ、バス停まで行こうか」 その言葉に亜美は「うん!」と元気に返事をする。 ――この重い心も楓君とすれ違うことが出来たら、少しは晴れるのかな? そんなことを考えながら外に出てバス停に向かい歩き出すと、いつもの高校生たちの姿が見えてきた。 しかし、そこに楓の姿はなかった。 「あれぇ? 楓ちゃんは?」 屈託なくストレートに声を上げた亜美に、 「広瀬は……いや、『楓ちゃん』はね、遅刻だって」 と笑顔で答え、 「亜美ちゃん、バイバイ」 と手を振ってくれた。 亜美も手を振り返しながらキョトンとして、円香を見上げた。 「ママ、ちこくってなぁに?」 「遅れちゃうことだよ」  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1388人が本棚に入れています
本棚に追加