【旋 律】前編 第十章

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  そうしてバス停で亜美を幼稚園バスに乗せた後、円香は主婦仲間との談笑もそこそこに解散し、家に向かい歩いていると、 「円香さん」 と背後で声がした。 「えっ?」 驚き振り返ると、そこには楓の姿があった。 「あ、あら……楓君、どうしたの?遅刻だって聞いたけど」 突然の出来事に動揺しながら尋ねると、楓は柔らかく微笑んだ。 「家に忘れ物をして取りに帰ってたんですよ」 「急がなくていいの?」 「学校には遅刻するって連絡したし、今テスト前でほとんどの授業が自習なんです。 だからどうせならのんびり行こうと思って」 「そうだったんだ。 体調でも崩したのかと心配しちゃった」 円香は少しホッとして、笑みを見せた。  
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