【旋 律】前編 第十章

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  「――あの、昨夜は大丈夫でした?」 言い難そうに伺う楓に、円香は苦笑を浮かべた。 「うん……結局ね、旦那は朝帰って来た」 小さくそう告げて、その後、悲しげに目を伏せた。 楓は何も言わずに眉を寄せ、二人が公園内を横切ろうとしたとき、 「せっかくいい天気だから、少し休みませんか?」 と言って楓はゆっくりベンチに腰をかけた。 その言葉に円香も「いいわね」と小さく微笑み、隣に座った。 楓は鞄から缶コーヒーを取り出してカチッと蓋を開け、「飲みませんか?」と差し出した。 円香はクスッと笑い「ありがとう」と缶コーヒーをゆっくり口に運んだ。 缶コーヒー特有の甘さが口の中に広がり、それが染み渡るほどに美味しく感じられ、 円香は小さく笑みを浮かべたあと、ふーっと息を吐いた。 「――楓君、昨夜はありがとう。 あの写真には思わず吹いちゃった」 「あんな、ムサ苦しい画像でよければいくらでも」 そう言って笑みを見せる楓に、本当に優しいんだから……、と円香は目を細めた。  
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