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「――あの、昨夜は大丈夫でした?」
言い難そうに伺う楓に、円香は苦笑を浮かべた。
「うん……結局ね、旦那は朝帰って来た」
小さくそう告げて、その後、悲しげに目を伏せた。
楓は何も言わずに眉を寄せ、二人が公園内を横切ろうとしたとき、
「せっかくいい天気だから、少し休みませんか?」
と言って楓はゆっくりベンチに腰をかけた。
その言葉に円香も「いいわね」と小さく微笑み、隣に座った。
楓は鞄から缶コーヒーを取り出してカチッと蓋を開け、「飲みませんか?」と差し出した。
円香はクスッと笑い「ありがとう」と缶コーヒーをゆっくり口に運んだ。
缶コーヒー特有の甘さが口の中に広がり、それが染み渡るほどに美味しく感じられ、
円香は小さく笑みを浮かべたあと、ふーっと息を吐いた。
「――楓君、昨夜はありがとう。
あの写真には思わず吹いちゃった」
「あんな、ムサ苦しい画像でよければいくらでも」
そう言って笑みを見せる楓に、本当に優しいんだから……、と円香は目を細めた。
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