【旋 律】前編 第十一章

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  嘘でしょう? 嘘でしょう? 嘘でしょう? 目から涙が溢れ、全身がガクガクと震えてくることが分かり、立ってはいられず床に手と膝をついた。 どうしよう……、どうしよう…… どうしたらいいんだろう。 円香は震えながら額を押さえたり、顔を触ったりし、動揺を落ち着かせようとした。 呼吸が苦しいので胸に拳を当てながら、ソファーに額を当てた。 どういうことなの? 『円香は俺の理想なんだ。 かわいくて、優しくて、料理も上手。 円香と結婚したい』 そう言って、プロポーズしてきた和馬。 『泣かせるようなことはしない、一生大切にするよ』 円香の脳裏に、結婚前の言葉がぐるぐる駆け巡った。 『改まって言うのも恥ずかしいけど、愛してる』 嘘つき! 大嘘つき! 苦しさに、溢れるように涙が流れた。  
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