【旋 律】前編 第十一章

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. ――――… 仕事が終わり、いつものようにカフェで待っていた美佳は、和馬の姿を見かけるなり、とびきりの笑顔を見せた。 「やぁ、待たせたね」 和馬はその笑顔にためらいながらも、 「居酒屋でも行こうか」 と目を合わすことが出来ないままそう言った。 そうして2人はよく訪れる居酒屋に入り、とりあえずビールを飲んだ。 「仕事が終わった後のビールは最高ね」 グイッとジョッキを口に運んだあと、美佳は、たまらないように目を細め、 「専業主婦にはこういう気分を味わえないのかしら」 と頬杖をつきながら、和馬を見た。 「どうだろうな。 うちの奴はそんなに飲むタイプではないし」 うちの奴……。 その言葉に美佳は面白くなさを感じ、小さく息をついた。  
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