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――――…
亜美を寝かせ終え、円香は気だるげにソファーに座りながら和馬の帰りを待っていた。
何度も溜息をつき、テーブルの上に無造作に置かれた結婚指輪に視線を落とし、呼吸が苦しくなるような気がしてギュッと目を閉じた。
――駄目。
今夜こそ逃げずに話し合おう。
あの夜は部長の接待と言っていた。
その時、彼が一晩の間違いを犯したとしたら、それは許せることではないけれど、夫婦互いに何か問題があるに違いない。
ちゃんと話し合わなきゃ駄目だ。
ただ、何もいわずに険悪なままでいたら、どんどん雰囲気が悪くなっていくだけだ。
そんなことを思っていると、家の電話が鳴り、円香の身体が目に見えて分かるほどに大きくビクついた。
また、無言電話?
身震いするような気持ちの中、そっと着信番号を確かめると、
今回は会社の電話番号ではなく、見たこともない番号だった。
誰だろう?
警戒心を抱きながらも、「はい、西沢です」と受話器を取り、平静な声でそう言った。
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