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「国家試験前でもないのに、試験直前に六法全書なんて読むなよ。
折角覚えた公式が、遠くへ消え去るぞ」
その言葉に楓は「バカだな」と笑い、
「ちょっと個人的に調べたいことがあったんだ」
と言ってパタンと本を閉じた。
「さすが、将来の弁護士。
試験前に六法全書で個人的興味を満たすなんて、やることが違うねぇ」
「うるさいな」
取り合わずに息をつく楓に、布施は思い出したように顔を上げた。
「もしかして前に言ってた親戚の人の……『ショックを受けるであろう事実』が発覚したとか?」
敏感な布施の言葉に、楓は苦笑した。
「……薄々気付き始めているけど、発覚まではいっていない」
「同情もほどほどにな、勉強に差し支えるぞ」
楓は「同情?」と顔を上げた。
「彼女が苦しむのが、可哀相なんだろ?」
当たり前のようにそう尋ねた布施に、楓は言葉を詰まらせた。
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