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その言葉に、楓はギュッと拳を握った。
「優しいのは……円香さんの方ですよ」
「えっ?」
「いつも、とても優しいじゃないですか」
楓は真っ直ぐに円香を見詰めた。
「何言ってるのよ」
「僕のことを思ってアップルパイを作ってくれたり、お弁当を作ってくれたり、いつもさり気なく気遣ってくれたり……」
「そ、それは優しいっていうわけじゃなくて」
円香が真っ赤になって否定しようとすると、楓は柔らかく目を細めた。
「いつも亜美ちゃんに優しい笑顔を見せているじゃないですか。
そしてそんな温かい円香さんの元で亜美ちゃんは天真爛漫にイキイキと過ごしているのを見るのが僕はとても好きで……。
今回のことで円香さんの笑顔がなくなってしまって、そして亜美ちゃんも変わってしまうんじゃないかと思ったら、なんだかいてもたってもいられなくて……怖いとまで感じてしまったんです」
楓はそこまで言い「何言ってるんだ、俺……」と彼自身、動揺しているようで、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
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