1270人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな楓を見て、円香はハッキリと感じ取った。
公園で無邪気に遊ぶ亜美を切なく目で見る楓の姿。
そうなんだ、楓君は亜美を見て幼い頃の自分をだぶらせて見ていたんだ。
私が平静を失って怒りにかられ、亜美が悲しむことを恐れてくれたんだ。
自分のことのように……。
それは楓くん自身が大人の事情で自分を変えてしまったから。
そうだ……夫婦が醜くなった時、誰より傷つくのは子供なのだ。
私の傷はいつか癒えるかもしれない。
だけど幼い子供に付けられた傷は人生に影響するほどに深いものになる。
円香は、もうすでに亜美を傷つけてしまっていた自分を恥じた。
「――ありがとう、楓君」
円香は目に涙を浮かべながら、微笑して楓を見上げた。
「いえ、そんな……僕に出来ることはこんなことくらいですが……」
この書類もそうだけど……。
それ以上のものを今、私は彼から受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!