【旋 律】前編 第十二章

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  円香がキッチンにいる間、美佳はテーブルの上に無造作に置かれた『訴訟方法』という書類を見付け、動揺し目を見開いた。 ――あの女、訴訟に持ち込むつもり? バカな女だから、てっきり泣き寝入りすると思ったのに! 思わぬことに美佳の手が震えてくることが分かった。 でも、覚悟はもう決めていたのだ。 これが最後の仕上げ。 浮気の賠償金なんて、せいぜい二百万程度。 そんな物、いくらでも払ってやるわ! 二百万で結婚できるなら、安いものよ。 紅茶を手にリビングに再び訪れた円香に、美佳は目を向き勢いよく顔を上げた。  
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