【旋 律】前編 第十二章

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  「私は昔からあなたが大嫌いよ! 頭も要領も悪いくせに、おいしいところは全部持って行く、男に甘えてすがって生きて行くことしか出来ない脳なし女! そんな女が結局、一番幸せ面して! 今だってその余裕の態度は何よ?正妻の余裕ってやつ? 醜く取り乱しなさいよ、私が憎いでしょう? 今の立場を家庭を失うことが怖いでしょう? どうして、そんな平気な顔しているのよ!」 取り乱して声を張り上げる美佳の姿に、円香は更に冷静になることを感じていた。 数時間前の私なら…… そう、楓に会う前の私なら、きっと醜く取り乱していだろう。 「平気じゃないわよ。 悔しくて情けなくて、やりきれなくて、どうしようもない気持ちだったわよ……でもね」 円香は息をつき、しっかりと美佳を見詰めた。 「今の私は女である以上に母親なの。 亜美を守らなきゃいけないのよ」 強い言葉に美佳は大きく目を見開き、言葉を詰まらせた。 それは、想像もつかない感情だった。 水を打ったような静けさが襲った。 美佳は何か言おうとしながらも、口にすることが出来ず、ただ拳を握り締めていた。  
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