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「私は昔からあなたが大嫌いよ!
頭も要領も悪いくせに、おいしいところは全部持って行く、男に甘えてすがって生きて行くことしか出来ない脳なし女!
そんな女が結局、一番幸せ面して!
今だってその余裕の態度は何よ?正妻の余裕ってやつ?
醜く取り乱しなさいよ、私が憎いでしょう?
今の立場を家庭を失うことが怖いでしょう?
どうして、そんな平気な顔しているのよ!」
取り乱して声を張り上げる美佳の姿に、円香は更に冷静になることを感じていた。
数時間前の私なら……
そう、楓に会う前の私なら、きっと醜く取り乱していだろう。
「平気じゃないわよ。
悔しくて情けなくて、やりきれなくて、どうしようもない気持ちだったわよ……でもね」
円香は息をつき、しっかりと美佳を見詰めた。
「今の私は女である以上に母親なの。
亜美を守らなきゃいけないのよ」
強い言葉に美佳は大きく目を見開き、言葉を詰まらせた。
それは、想像もつかない感情だった。
水を打ったような静けさが襲った。
美佳は何か言おうとしながらも、口にすることが出来ず、ただ拳を握り締めていた。
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