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「人はね、大人になれば嫌でも取り繕って生きていかなきゃいけなくなる場面もあるわ。
でも、あなたはまだ子供なのよ、かけがえのない時代をもっと自分に正直に、わがままに生きてほしいの。
もう会えなくなるけど、私……あなたがとても心配なのよ」
そう言って切ない目を見せた円香に、楓は苦しそうに目を細めた。
――どうして……
どうしてこんな時に、人の心配をしてくれるんだろう?
自分がこんなに大変で、こんなにつらい時に僕の心配を……。
楓は肩を小刻みに震わせ、
「円香さんっ!」
と堪えきれなくなったように円香の手をギュッと握った。
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