【旋 律】前編 第十三章

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  楓は小刻みに震えながらギュッと目を閉じた。 「……口にしてはいけない言葉って……あるんです」 手を強く握ったまま、苦しそうにそう言った楓に、円香の鼓動はこれ以上ないほどに激しく打ち鳴らしていた。 「円香さんの言うとおり、僕はまだ子供です。 なんの力もない誰も守ることが出来ない非力な子供だから……勝手なことは言えないんです。 ――もし、僕が大人なら……」 僕が大人なら……――― 楓はそこまで言い、握った手に力を込め口を閉ざした。  
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